【弘前市】津軽塗の技法を彫刻に 7世紀から伝わる乾漆彫刻の世界
津軽の漆文化といえば津軽塗ですよね。最近では、カラーバリエーションが豊富になったりと若手作家さんも増え伝統だけでなく、新しい文化として若い方にも浸透してきていますが、逆に注目されにくいものに古くから伝わる漆の文化があります。
乾漆(かんしつ)という技法をご存知でしょうか。正しくは乾漆造(かんしつぞう)と呼ばれ、漆工の技法の一つで東洋の彫像制作の技法です。日本には飛鳥・奈良時代に中国から伝わったものと言われており、有名な唐招堤寺の鑑真和上像や、興福寺の阿修羅像も乾漆で作られています。その名の通り、漆が使われています。
彫刻と言うと大きな物から削り出して作るイメージがありますが、乾漆は木彫りでもなく、鉱物でもなく、漆と定着させる麻布だけで作られます。いくつもの彫刻に乾漆が使われてきましたが、工程の複雑さ、技術修得に時間がかかることから約2世紀ほどで途絶えてしまった技法だそうです。その乾漆彫刻が間近で見られる作品展が田舎館村博物館で開催されています(2021年8月29日まで)。
その乾漆を彫刻に用いたのが、浅利竹清氏。高校の教員をしながら、高校で教える科目が増えた事をきっかけに彫刻制作を始めたそうです。ある作品展で乾漆彫刻に出会いましたが、既に途絶えた技法のため、独自に研究を重ねながら津軽塗の技法が応用できると考え、1年後には作品として発表しました。
乾漆作品を手がけている彫刻家は、日本でも片手で数えられるくらいの人しか作れない貴重なもの。漆を使っているので時を経ながら色合いやツヤも変化していく様子も楽しめるアートです。“ビーナスの誕生”にも引けを取らない美しい裸婦像は一見の価値がありますよ。1300年前から伝わる技法と津軽塗の技法がMIXされた乾漆彫刻の世界をぜひご覧ください。
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